健康・免疫に寄与する動植物由来の超微細粒子エクソソーム
食は、健康長寿に欠かせない重要な要素です。病気や健康との関連の重要性が知られている糖、脂質、タンパク質は、細胞内で合成される他に、外から摂取することによりカラダに取り込まれます。最近、これらとは全く機能が異なる「エクソソーム」と呼ばれるものが細胞から分泌されていることが注目されています。
これは、「細胞外小胞」の一種でウイルスのような50-150nm(ナノメーター)ほどの小さな球形の小胞で、ヒトの細胞だけでなく広く動植物の細胞から分泌されています。
例えば、「母乳」にもたくさん存在していて、赤ちゃんの生後6ヶ月間の自己免疫をあげるために重要であることもわかっています。そればかりか、精子と卵子が受精する時には、このエクソソームが不可欠であることもわかっており、人類の誕生にエクソソームが欠かせないほど重要なものです。
母乳中のエクソソームのように我々の健康にプラスに働くエクソソームもあれば、がん細胞から出てくるエクソソームのように、がん細胞の転移に関与するなどのネガティブ要素もあります。
がん細胞から分泌されたエクソソームは、血液など体液中にも超早期から存在でてくるので、カラダの中にあるがん細胞を画像検査でわかるよりも超早期に見つける早期発見検査としても注目されています。一部、この原理を用いて膵がんや乳がんなどの超早期発見検査として広島大学発のベンチャーの株式会社ミルテルで実用化しています。
実は、我々が毎日摂取する食事の中にもたくさんのエクソソームが含まれています。食べるものによりエクソソームの性質が違うので、我々の健康に大きく影響する可能性があります。昔から効能が知られる食べ物がありますが、その機能にエクソソームが関与している可能性もあります。
免疫をあげるエクソソーム、がん細胞を抑えるエクソソーム、炎症を抑えるエクソソーム、これらがどの食品にどれだけ含まれているのかなど、まだまだわかっていません。
しかし、今後それが解明されると健康長寿のために食べるべき食事も見えてくるかもしれません。
実際に、乳酸菌やプラセンタなど健康増進のための原料にもたくさんのエクソソームが含まれていおり、その機能性にエクソソームが重要であることもわかってきました。将来的には、機能性表示として「免疫をあげるエクソソームの力価」なんていう表示がされるようになるかもしれません。今後、エクソソームと健康は見逃せないキーワードです。
プロフィール
広島大学
大学院医歯薬保健学研究院 基礎生命科学部門
細胞分子生物学研究室
教授
日本RNAi研究会会長
薬学博士 田原 栄俊(たはら ひでとし)
1985-1989年 東京薬科大学薬学部製薬学科卒業
1989-1994年 広島大学大学院医学系研究科博士課程
1994年 広島大学大学院医学系研究科博士課程後期分子薬学専攻 博士(薬学)
1994-2001年 広島大学 医学部 総合薬学科 文部教官助手
1998-2000年 National Institute of Environmental Health Sciences,National Institute of Health (NIH), North Carolina, U.S.A.,Dr. J Carl Barrett (Director of NIEHS) Visiting Fellow
2001-2005年 広島大学 医学部 総合薬学科 文部教官助教授
2006-2014年 広島大学 大学院医歯薬総合研究科 創生医科学専攻 病態探求医科学講座 細胞分子生物学研究室 教授
2014- 広島大学 大学院医歯薬保健学研究院 細胞分子生物学研究室 教授
2016- 広島大学 薬学部 薬学科 学科長
2016- 広島大学 大学院医歯薬保健学研究院 基礎生命科学部門 部門長
2008- 日本RNAi研究会会長
2008- 日本癌学会評議員
2012-2017 国際個別化医療学会評議員
2012-2019 日本がん分子標的治療学会理事
2012-2018 国際細胞外小胞学会(ISEV), Executive Board of member
研究略歴:
2005年 テロメアGテールHPA法開発、論文、特許化5514401(平成26年4月4日)
論文:
G-tail telomere HPA: simple measurement of human single-stranded telomeric overhangs. Nature Methods 2:829-31. 2005
特許
Gテイルの測定方法及びそれを用いたキット(特許5514401)
2011年 老化誘導型のマイクロRNAとしてmiR-22を報告
2012年 株式会社ミルテル起業(大学発ベンチャー)世界オンリーワン技術
テロメアテストを医療機関で開始。
日本初のマイクロRNA検査を開始